やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 ヴィオン師匠が私にオルを預けてくれて。
 私達はふたりきりで、倉庫のすぐ脇で地面に座り込んで話をした。
 真横を何人もの魔法士達が通り過ぎて、倉庫内部の修復作業に勤しんでいた。
 

「スピネルは俺を怒らせたかったのか、わざと俺の前で君をディナ、と2回呼んだだろ?
 あれで手足の2本を砕くと決めた」


 2回呼んだから、2本!
 ……初対面の時からヨエルが私に、ディナと連発していたことは、オルには黙っていよう、と思った。


 
 身体の中に新しく加わったヨエルの魔力を吸収出来たのか、オルの言葉も滑らかになってきていた。 
 切られた傷の再生速度が早くて、驚く。



 モニカが心身ともに限界で、祖父が先に連れて帰るからとサイモンが伝えに来てくれて、そのまま背を向けて帰っていくのを、オルがぼんやりと見ていた。



「あまりゆっくり話せないから、こんな話はしたくないけど、あのふたりとの縁は切らなかったんだね?」


 サイモンとモニカとの悪縁のことだ……


「ふたりともね、事情があって、ああいう感じになったけれど、取りあえず解決出来て、これからはうまくやっていけるので。
 13年先では、お手柔らかにお願いいたします……」

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