やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「これの中に入れてきた。
 帰ったら元の大きさに戻すが、スピネルの魔力はオルが喰った。
 魔力を喰われた魔法士は、廃人だ。
 新しく魔力が宿ることもないスピネルは、もう何も出来ない」


 つまり。
 ここまでオルを痛め付けたのは、ヨエルじゃなくて、師匠だったのね……


「こんな、手のかかる……馬鹿を。
 手負いの狼みたいなオルシアナスを、いつもまともにしていただいて。
 キャンベル嬢には、王太女殿下、魔法庁一同、心より御礼申し上げます」


 師匠に頭を下げられて、私は焦った。
 私の方こそ、御礼を申し上げたかった。


「こちらこそ、私の方こそです。
 彼が居ない間、代わりに魔力を流してくださっていた、と聞いていました。
 本当にありがとうございました」

「いえいえ、こちらも必死でした。
 もしも、貴女が儚くなられたら、オルシアナスは第2のヨエル・フラウになるところでしたから」


……ヨエルが黒く染まり出したのは、母親が亡くなってから。


「そ、そんなんで……あんな……同情……なんかする……な」


 不機嫌そうにオルが言ったので、私は我に返った。
 私は今のスピネルに同情なんかしない。


 ただ、母のために、母に年金を渡したくて国にその身を捧げようとした、親孝行をしたかっただけの赤い瞳の少年に。

 思いを馳せただけだ。

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