やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

57


「私以外の皆が、幸せで。
 それが嬉しいはずなのに。
 私だけが取り残されている。
 そんな気がするんです」


 24歳の5月。
 一昨年、司法試験の予備試験に合格するまでは、表向き順調だった。
 しかし、去年司法試験本番で……落ちた。



 2回目の試験が来月に迫ってきて、日々死に物狂いで勉強しているのだが、鬼気迫る私の様子に一度落ち着け、とフィリップスさんがランチに誘ってくれて。
 私はフィリップスさんを相手に、愚痴り始めた。


「そんな風に思い始めたきっかけは何かあったんですか?」


 本当は私の愚痴等聞きたくもなかろうに。
 口では自分は冷めた人間だ、と言いながら。
 本当は面倒見の良いフィリップスさんが話すように促してくれる。


「先週、クレイトンのマーサからベンと結婚すると連絡がありまして、おめでとう、と言えたのは言えたんですけれど」


 ベンはクレイトン循環オムニバスの運転手になっていた。
 同じ孤児院出身のふたりと各自1台ずつ自分でバスを購入して(祖父に借金して)3人で3台のバスを領内巡回する、バス会社を立ち上げたのだ。
< 423 / 444 >

この作品をシェア

pagetop