やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 あんなパレードを大々的に開催するくせに、魔法士の顔が分かる写真には、魔法庁は目を光らせていて。
 彼等の素顔は写真撮影出来ないように、各自が自分をシールドと呼ばれる透明な幕のようなもので覆っていて、彼等の肖像権が守られているのは有名だった。
 だからお姉様の様に、名前は知っていても。
 直接目にしない限り、オルがどんな顔をしているのかは、皆が知ることはない。 



「あんなに綺麗な顔をした魔法士は初めて、だって……
 あの場にいた全員に、8割増し美男子の魔法をかけられるわけがないでしょう?」




「え、知らなかったよ。
 あのパレードの時気分が最悪で、顔に出していたから、絶対に嫌われモンになったな、と思ってた」


 端に座っていた私の横から声がして。
 あの腰に来るような声がして。
 会話に加わってきた声がして。


 それまで何の気配もなく。
 5月だと言うのに黒いショートコートのフードを被り眼鏡を掛けたオルが、胡座を組んで床に直接座っていた。


 ◇◇◇


「そこにディナが居るのが分かっているのに、あのクソババアがパレードから外れるな、皆に笑顔で手を振れ、とうるさくて」


 久し振りに聞く、腰に来る声に動けない私以外は、皆一斉に立ち上がって。
 テーブルを挟んだ向こう側に4人で固まった。

 全員が突然現れた見ず知らずの、胡散臭い若い男に怯えて凝視していた。
 
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