やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 こんな女、相手していられない。
 パピーが無事か気になって、急いでベッドを覗いたが、眠っているはずのパピーの姿はない。


「だからー、あたしがパピーなんだってぇ」

 もしかして落ちたのかも、とベッドの向こう側を探してみる。
 壁との狭い隙間には幼いパピーもさすがに入れないのは分かるのだが、確認だけしてみる。 


「ねー、ねー、ディナ、探すの止めて話を聞いて」


 女に話しかけられても無視して、モニカの部屋、バスルーム、レストルーム、全部の場所をパピーを呼びながら、見て回る。
 そんな私の後ろを全裸の女が付いてくる。


 どうしてなの。
 どこにいるの。
 あんな傷を負ったまま、消えてしまった小さなパピー。
 少しの間だからと出掛けるんじゃなかった。


 どこにもいない、パピーはどこにもいない。

 力が抜けて床に座り込んだ。
 物凄い喪失感が私を襲う。


「泣かないで、ディナ。
 パピーはホントにあたしなの。
 あたしは『時戻しの魔女』、昨日は無理して魔力を消耗して、子供の姿になってしまっていたの。
 ありがとう、貴女のおかげで魔力が戻って、元の姿に……」


 自分でも気付かないくらい、静かに涙が流れていたようだった。
 時戻しの魔女と名乗った全裸の女に抱き締められて。


 もう一度パピーに会いたくて、私は泣いた。
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