やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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心身の疲れに睡眠不足も加わって、情緒が可笑しくなっていたんだと思う。

 自分はパピーだと言い張る、『時戻しの魔女』を名乗る全裸の女の、豊かな胸に顔を埋めて泣いてしまうなんて。
 ベッドの中でしか泣かない、が崩れてしまった。


 ……認めたくないけれど。
 この魔女がパピーなのだ、と理解し始めていた。
 あんなに幼い子供が勝手に出ていってしまうなんて、現実的ではないし……

 何より、魔女は黒髪に金色の目をしている。
 それはパピーの色だ。
 私のパピーの本来の姿は身体をクネクネさせた、お色気たっぷりの美女なのだ。


「ねぇ、落ち着いた?」

 魔女が微笑みながら、私の髪を撫でる。
 その掌から何か魔力のようなものが流れているように感じて、慌てて彼女から離れた。


「話は聞くから、先ずは何か着て。
 その前に、背中の傷を見せて」

 いくら同性とは言え、全裸は目のやり場に困る。
 魔力を消耗していたというパピーにさえ、魅了されたような私だ。
 魔力回復したこの美女に、どのようにいいようにされるか分かったものじゃない。

 必要以上に近付いて、その目を見つめないように。
 用心するに越したことはない。
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