やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

30

 10年後のオルとの幸せな未来を語る私を、とても優しい目で見つめているオル。
 だけど、彼はあまり幸せそうに見えない。


「俺の知るディナは知的で慎重なひとだ。
 時戻しの魔法に飛び付いて、ハイパーとのやり直しをやりたがる性格じゃないのは分かってた。
 やはり、シドニー・ハイパーとの悪縁を話さないことには、ディナは時戻しをやる気ゼロだな……」


『ディナが過去の時間をやり直したいのなら』と自発的に望めば叶える、と言っていたのに。
 オルの口振りは彼が私に、どうしても時戻しをさせたいように感じた。
 それに思わぬ名前が出てきた……シドニーとの悪縁?


 今の私にとってシドニーはモニカのおまけのような存在になっていたのに、彼との縁が10年経っても続いていたのは驚きだ。
 こうなってしまったモニカとの関係で、あのふたりと穏やかに親戚付き合いを続けているとは、思えないけれど……


「嘘をついたと怒っても構わない。
 昨夜の事故から助けたくて俺はここに来た、と言ったけれど、それは君に時戻しの魔法をかけたいからなんだ。
 俺が時戻しの術を会得した本当の目的は、13年前に戻ってディナにハイパーとの悪縁を切らせること」

「……」


 オルが言う13年前とは、今の私から見れば、3年前の高等学院入学後の頃のことだろう。
 本当は今ではなくて、シドニーと知り合う前後の16歳の私にオルは会いに行きたくて、時戻しの魔法を身に付けたということ、なのね。
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