やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「それに、私に時戻しをさせたかった、と言った。
 それはきっとシドニーとの悪縁に困っている29歳の私のためだから。
 今の私がいいように使われる、とひがんだの。
 何よりも、貴方が一番大切にして、愛しているのが10年後の私であるのが、すごく悔しいの」

「……」

「自分の言ってることが馬鹿みたいだ、と自分でも分かってる。
 私は私に……貴方を待つこと無く、戻ってきた貴方から直ぐにプロポーズされるであろう10年後の私に嫉妬しているの。
 貴方が作るオムレツを毎朝食べて、貴方の顔に好きなだけ触れて、貴方の能力を受け継いだ子供を産める10年後の私が妬ましいの」

「……」

「何故なら、貴方が10年後に戻ってしまって、ここに残された今の私は他の人を愛することも出来ず、ひとりきりでいつか来る貴方との出会いを待って待って、待ち続けるんだから。
 どうして、自分が恋人だと話したの?
 どうして、私を抱こうとしたの?
 ここに、私を置き去りにするくせに!」


 勢いを付けて、正直な思いを吐き出した。
 オルが辛そうな表情で見ている。
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