やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「……ごめん、俺が悪かった。
 言われて初めて気が付いた。
 言ってることも、やってることも無神経だった、最低だな……」

 黙っていたら、オルに抱き締められた。


「どうしてモヤモヤしているのか話してくれて、ありがとう。
 明日、3年前に戻るのは、俺がやる。
 もう時戻しの話は、しない」

「……」

「こんな時は、抱き締めるのは許してよ。
 ……君は今、泣きそうな顔してる」


 こんな時でも、泣きそうでも。
 今はオルの腕の中では泣いたりしない。

 ……私が泣くのはベッドの中でだけ。


 ◇◇◇


 自分のベッドでひとしきり泣けば、心は落ち着いてきた。

『明日、3年前に戻るのは、俺がやる』
 本当に、明日オルは行ってしまうのだろうか。


 さっきは嫉妬で情緒が乱れて、考えられなかったけれど、時戻しの魔法について、もっと詳しく聞かなくてはならない。
 私(29も、16も含めての)に優しい、あのオルが。
 自分の代わりに3年前に行って欲しがっていたのは、何か理由があるのだ、と落ち着いてきた今ならわかる。


 絶対に時戻しを行わないといけない、何か。
 術者のオルが戻れない、何か。
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