LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「ようは、明るい自分の仮面がつらくなる時があるってことよね」

「そんなはっきり言う?」

「もうそんな自分はやめてしまえばいいのに」

「……やめられないよ。どうやめていいのかわからないよ」

 日長直哉。その日長という苗字。

 日長はサンストーンの和名に使われている文字。半貴石(はんきせき)の日長石。貴石を扱う宝石店ではまず見ない。パワーストーンショップで安価で売られている。

 高値で取引される翡翠と違って。

 翡翠は縄文時代から日本で珍重されてきた。今でも高級品だ。

 サンストーンは似たような名前のムーンストーンよりマイナーだ。

 ムーンストーンは宝石店でもちょいちょい見かけるのに。

 似たような名前なのに。

 しょせん自分は半分なのだ。貴石(きせき)の半分、半貴石。

 翡翠川瑶煌。

 翡翠の川といえば糸魚川(いといがわ)。翡翠の産地として有名だ。

 瑶煌の名前は(たま)(きら)めく。まるで宝石に関わる仕事につくためにつけられたような名前。

 直哉は瑶煌がうらやましくてたまらない。

 手が届かない、才能、その輝き。

「闇、ね」

「闇、だよ」

 直哉はため息をついた。心の中に闇の迷路が出来て、出口がどこかわからない。

< 119 / 262 >

この作品をシェア

pagetop