LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「なんだ、クズ石じゃん」

 透明度のない白濁(はくだく)した石を見て、瑠璃は嘲笑う。

 いつもは大人の対応を心掛けている藍も、さすがにムッとした。

「こんなの大事に持ってるんだ。ジュエリーショップの店員なら、きちんとしたジュエリーを身に着けてほしいものね」

 明確に藍を傷付ける意図を感じ、藍は嫌悪を浮かべる。大人の対応にも限度がある。特に今日は。

「すみません」

 一応は謝るものの、隠しきれない怒りが(にじ)んでいた。

 見知らぬ女性に言いがかりをつけられ、平手打ちされた。

 そのうえ瑠璃は、こんなときにこんなに憔悴(しょうすい)した藍の精神をさらに削ろうとしてくる。

 こちらは今までずっと我慢して気を遣って、関係を悪化させないようにしてきたのに。

「今ね、瑶煌は私のためにラピスラズリのピアスをデザインしてくれているの」

 アクアマリンを(もてあそ)びながら、自慢げに瑠璃が言う。じっとりとアクアマリンを見て、何かをたくらむような顔をしている。

「知ってます」

 初めて反論した。

 瑶煌の家で見たことがある、あのデザイン画がそうだろう。見せてもらったものではないが、今は正直でいたくない。

 瑠璃は眉をつりあげた。

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