LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 アクアマリンの石言葉は複数ある。

「幸福」「富」「聡明(そうめい)」「勇敢」

 俺は人を幸福にできないし、富もない。聡明さもないし、勇敢さもない。

 瑶煌はため息をついた。

 人が決めたこれらの言葉は、売るために作られたものかもしれない。だが、人を喜ばせ、幸せにするためのもののはずだ。

『人を幸せにするジュエリーを作る、売る』

 それがコンセプト店なのに、誰も幸せになっていないような気がしてくる。

 まず俺が、誰も幸せにでてきていない。

 瑶煌は指輪の作りかけの原型ワックスを手に取る。

 この指輪の完成品を藍に渡す勇気が出るのか疑問に思う。

 だが、できることなら渡したい。

 藍は少年時代の自分を覚えていた。

 それがわかったのがつい先日。

 純麗(すみれ)に「店のこともちゃんと見て」と言われ、話をしてみた。そのときのことだ。

 アクアマリンも大切に持っていてくれた。

 すごくうれしかった。

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