LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 いつもは多少のことは苦笑で流してくれるのに。

 だから安心して瑶煌のために働くことができた。

 瑶煌のため。瑶煌を愛しているから。

 だから、藍を排除しようと思った。

 瑶煌がいつもの瑶煌じゃなくなるから。

 私の愛する瑶煌じゃなくなるから。

「もう遅い。危ないから帰れ」

「……送ってはくれないの?」

 送って、と頼んだらいつもは「仕方ないな」と苦笑しながら駅まで送ってくれた。

 そうだ、苦笑だ。

 いつも瑠璃のことを苦笑して見ていた。

 藍に向けるような愛のこもった微笑ではなく。

 瑠璃は唐突にそのことに気がついて慄然(りつぜん)とした。

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