LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

52 カメオ

 閉店間際、ダイヤのリフォームを依頼する女性がいた。

「母からもらったダイヤなの。母は祖母からもらったんですって」

 客の少なくなった店内はよく声が響く。

 うれしそうに言う女性の声が、藍にも聞こえた。

 瑶煌は丁寧に要望を聞き、打ち合わせをしていた。

 閉店時間をすぎても打ち合わせは終わらず、シャッターをしめることもできずにクローズドの看板だけを出した。

「先に帰って良いから」

 隙を見て言った瑶煌の言葉に従い、女性三人は事務所のロッカーへ向かう。

 藍はため息をついた。

 辞めたいって言い損ねた。

 瑠璃に言うのは(しゃく)だし、純麗に言うのも気が引ける。

 明日、電話で言おうかな。

 あきらめてロッカーに鍵を差したとき。

 違和感があって、藍は首をかしげる。

 開いてる?

「お疲れさま、また明日ね!」

 純麗はさっさと帰っていく。

 嫌な予感がしつつ、藍はロッカーを開けた。

 
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