LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 瑶煌に電話する。

 入社当時に連絡先は教えられていた。

 初めて電話する。こんなことで連絡することになるとは思っても見なかった。

 短いコールで瑶煌はすぐに電話に出た。

「店長、日長さんが」

 それだけで瑶煌には通じた。

「俺のところにも連絡が来た。今探している」

「私にもできることはありませんか!?」

 藍が言うと、瑶煌は黙った。迷うような気配がスマホ越しに伝わる。

「日長さんが心配です。何かさせてください」

 藍が言い募ると、じゃあお店に来て、と彼は言った。

「店で落ち合おう」

 藍は了承して通話を切った。

 すぐにカーディガンを羽織ってバッグを掴み、スニーカーを履いてとびだす。

 普段着のよれたTシャツにジーンズというかっこうだが、気にしてはいられない。

 電車に飛び乗り、駅に着いたらいっきに店まで走った。

 街灯があるのに、やけに道が暗く見えた。

 運動不足で急に走ったから心臓が痛い。背中も肩もあちこちが痛い。

 だが、立ち止まって休む余裕などなかった。

< 219 / 262 >

この作品をシェア

pagetop