LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 デザインだ、とすぐに気が付いた。

 藍は応接セットにほど近いカウンターにいたから。

 鉛筆の芯だけが飛び出したような不思議な筆記用具でささっと描いて行く。ラインを描いたら色鉛筆を手に取り、色を塗っていく。

 すごい。どんどん出来上がっていく。

 もっと近くで見てみたい、とは思うが、そうする勇気はない。

 真剣な顔でとりくむ瑶煌の邪魔をしたくない。

 さっきはあんなことがあったのに、まるで何ごともなかったかのようだ。

 思った瞬間、顔がほてる。

 わ、忘れなくちゃ。

 そう思うと余計に思い出してしまう。抱き留めた腕、密着した背中、その体温。

 男性に抱きしめられたことなんてなかった。

 お付き合いしたことは何度かあったが、何も進展しないまま別れることばかりだった。

 自分の中のなにがそんなに相手を失望させるのかわからないまま、今の年齢になってしまった。

 でも、と藍は思う。
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