ＬＥ ＣＩＥＬ ＢＲＩＬＬＡＮＴ 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

「お店には慣れた？」

「……正直、まだ慣れません。覚えないといけないことが多くて」

「そうだね。宝石は種類もたくさんあるし。コップ割って瑠璃に怒られたんだって？」

　聞かれて、藍は一瞬で顔が熱くなった。はずかしい。ただでさえ直哉のせいで脈が早くなっているのに。懸命に忘れようとしていた、瑶煌に抱きとめられた事実まで思い出してしまう。

「私が悪いんです」

「わざと割ったわけじゃないんでしょ？　瑠璃は他人にも自分にも厳しいからちょっときついかもしれないけど、きちんと頑張ればわかってくれるから」

　それを心配して誘ってくれたのだろうか。藍はホッとした。気を配ってくれる人がいる、それだけで心強い。直哉の優しさに肩の力が抜けていく。

「店長、実は君にすごい期待してるんだよ」

「そうなんですか？」

　特筆すべき能力がないことは、自分が一番良くわかっている。なのにどうしてなのだろうか。