束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】

4. 惹かれていく

 そこからはもう沼に落ちるように、彩子に惹かれていった。

 彩子は洋輔のすべてを受け入れてくれた。決して拒絶しなかった。大きな愛で包み込んでくれた。

 洋輔のすること一つ一つに嬉しそうに反応する彩子が、かわいくて、かわいくてしかたなかった。


 だが彩子に惹かれる一方で、小谷への気持ちがなくなったかというとそうではなかった。

 見かければ声をかけたくなるし、構いたくなる。彩子のことを差し置いて、小谷を優先したのはきっと一度や二度ではない。

 あとで彩子を蔑ろにしてしまったことに気づいて、後悔が押し寄せるが、当の彩子はまったく気にする素振りがない。

 そんな彩子に洋輔はなぜだか怒りを覚えたのだ。


 自分は小谷に構うくせして、それに嫉妬しない彩子に憤りを感じていた。矛盾も甚だしいが、それが真実洋輔を占める感情だった。

 彩子にしてみれば理不尽極まりないことだろうが、洋輔は彩子に想われたくてしかたなかったのだ。


 その想いは日に日にその強さを増していった。
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