束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「ははっ! あっはははは!」

 洋輔は腹を抱えて苦しそうにしている。

「そんな笑う?」
「はあ、苦しい。いや、笑うでしょ。折戸らしいね。俺、折戸のそういう突拍子もない発想好きだよ」
「ありがとう。私も自分のそういうとこ好きなの」
「あっはは! 折戸最高だよ。あ、でも一つ訂正ね。折戸は旬真っ盛りだと思うよ?」
「え、何それ、照れるじゃん。ありがとうございます?」
「どういたしまして? ははっ。はあ、もうしょうがないな。付きあってやるか」


 彩子はその言葉に喜びで飛び上がりそうになった。だがその気持ちを表に出すわけにはいかない。今までと何ら変わらないように振舞わなければならないのだ

「ははー、ありがたき幸せ」
「なにしてるの」
「いやー、感謝の気持ちを述べておこうと思って。まあ、任せなさい。彼氏様のことは大事にしますよ?」
「奇遇ですね。俺も彼女様のことは大事にしますよ?」

 そのあとはいつもの雰囲気に戻っていた。



 洋輔がどこまで本気で捉えたのかはわからない。ほとんど軽口のように話を進めてしまったのだから。

 でも、それでいいのだ。友人の延長と思わせなければ意味がない。小谷への想いを知っていることも、それで彩子が傷つくことになるかもしれないことも、洋輔に知られてはいけない。それを知ったが最後、洋輔は別れを選ばざるを得なくなる。そんなことには絶対させない。どれだけ傷つこうとも隠し通すと決めた。自分の想いが報われなくたっていい。洋輔が心穏やかに過ごせるならそれでいいのだ。
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