束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
第二章 二人の距離

1. 友人の距離から

 翌日、会社での態度はいつも通りの洋輔だった。もちろん彩子も普段通りに振舞った。二人ともいい大人なのだ。プライベートで何かあったからといって、それを表に出したりなどしない。

 だから彩子は洋輔の心情をはかりかねていた。

 律儀な男である。きっとなかったことにはしないはずだ。だが彩子から距離を縮めれば、洋輔はそれを望んでいなくても受け入れることだろう。そういうやつだ。

 だから彩子から攻めることはできなかった。今までの関係と変わらなくたっていい。洋輔の日常が平穏であるならそれでいい。彩子はそう思っていた。


 だからスマホに表示されたその文字に彩子は心底驚いた。


『週末遊園地行く?』


 洋輔からそうメッセージが送られてきたのだ。その内容にも、会社のチャットでないことにも驚いた。今は昼休憩中ではあるが、これまでは会社にいるときには、たいてい社内用のチャットツールでやりとりをしていた。

 それにこれまでにも二人で休日に出かけたことがあるとはいえ、それはなんとなく友人として出かけても違和感のない範囲のものだった。昨日彩子が言ったからなのだろうが、遊園地というのは初めてだ。


 明らかに今までの関係から一歩踏み込んだお誘いだった。洋輔はちゃんと彩子を恋人枠に入れてくれたのだろう。そのことに彩子はほっと息をついた。


 『行く』と返事をして、二人で週末の予定を立てた。
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