ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 星來は起き上がり、私の目を真っ直ぐ見つめた。


「ママはにちかさんときょーたん、どっちがすき?」

「えっ!?」


 思いがけない質問に電車の中なのに大声をあげてしまった。
 周囲の人に謝ってから、声を(ひそ)めて聞き返す。


「どうしてそんなこと聞くの?」

「だって……」

「星來は恭ちゃんのこと嫌い?」

「きらいじゃないけど……」


 星來の考えていることが読めない。恭ちゃんが言ってたようにママを取られると思っているなら、「星來と恭ちゃんどっちが好き?」って聞くはずだよね。

 恥ずかしさもあったけど、星來が真剣に聞いているので私も微笑んで答えた。


「日華さんだよ」

「ほんと?」

「ママ、日華さんが大好きなの」


 娘の前ですごく恥ずかしいけど……!
 小声とはいえ、電車の中だし!

 顔が赤くなっていませんように。


「そっかあ……」

「星來は?日華さん、好き?」

「だいすき!はやくあいたい!!」


 ぱあっと明るい向日葵みたいな笑顔に戻ってくれた。すっかりいつもの星來のかわいい笑顔だ。

 私も早く会いたい。
 早く会いたいよ、日華さんに――。


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