ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 お弁当箱を片付け、レジャーシートも仕舞う。星來は抱っこがいいみたいなので、ベビーカーに荷物を乗せて恭ちゃんに押してもらった。


「ほんとにごめんね、恭ちゃん。星來、いつもは初対面の人でもお話するんだけど……」

「全然いいって。俺もごめんな。ちょっと勉強し直すわ」


 話しながら歩いていたら、あっという間に駅に着いていた。


「あかりはこのまま帰る?」

「ううん、この後予定あるの」

「そっか、俺は帰るわ。またな」

「ありがとね。気をつけて」

「星來ちゃん、今日はありがとう」


 恭ちゃんが星來に声をかけると、星來はおずおずと恭ちゃんの方を向いた。遠慮がちにふりふりと手を振る。


「バイバイ。またね」


 恭ちゃんもにっこり笑って手を振り返し、帰って行った。
 恭ちゃんが見えなくなるまで見送り、日華さんに早めに着きそうなことを連絡した。

 とりあえず待ち合わせ場所に向かうため、電車に乗る。電車に揺られている間、星來は静かだった。
 寝ちゃったかな?と思ったけど、目はぱっちり開いている。


「星來、これから日華さんに会えるよ」

「ほんと?」

「うん、楽しみだね」

「ねぇ、ママ」


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