ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 その答えは、案外すぐにわかってしまった。

 あかりには星來ちゃんという娘がいたのだ。
 初めて見た時は少なからずショックを受けたが、すぐにあかりの左薬指に指輪がないことに気づく。

 案の定、星來ちゃんに父親はいなかった。

 もしかして、星來ちゃんこそが俺の前から消えた理由だったんじゃないか――?

 俺のことを思って、一人で産んで育てようとしたのかもしれない。もしそうだとしたら……今度こそ離すわけにはいかない。

 星來ちゃんが懐いてくれるのをいいことに、強引に家に呼んでしまった。
 求職中だというあかりに家事代行を提案し、更にアパートが水浸しになったのでここに住まないかと勧めた。

 必死に繋ぎ止めようとしているのは自覚している。だが多少強引でも、もう二度とあかりを手離したくなかった。

 そしてもしかして、という疑惑はどんどん確信に変わっていく。
 星來ちゃんは俺に似ている気がする。あの後あかりが妊娠していたことは十分考えられる。


「星來ちゃんの父親は、俺なんじゃないの?」
「違います」


 否定されてしまったが、あかりの反応的に嘘なんじゃないかと感じた。
 あかりは基本的に嘘が下手だが、時々女優のような演技力で嘘を吐くことがある。

 それは、嘘が相手のためになると確信している時だ。


< 77 / 195 >

この作品をシェア

pagetop