ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 一緒にいた男が星來ちゃんの父親だと告げられた時は、気が狂いそうになった。


「あかり、どこにも行かないでくれ!」


 本当の父親が現れて、再婚すると言われたら普通は諦めるところだろう。だが、往生際の悪い俺はどうしても諦められない。

 だって、知っているから。


「星來の父親が、好きだったからです」
「あの人が好きで一緒になりたかったからです」
「芸能人となんて、疲れちゃったんです」


 あかりが冷静に淡々としている時こそ、嘘を吐いていることを。その嘘が、俺のためであると確信していることも。

 君の気丈なところも愛しているから、わかるんだ。
 どうか本当のことを教えて欲しい。


「俺が好きなのはあかりだけだ」

「でも、私みたいな一般人、無理です……!!」


 その言葉を聞いた時、初めてあかりの本音に触れられたと思った。


「……それがいなくなった理由?」


 黙り込むあかりに、それは肯定だと捉える。
 やっぱりそうだったのか。いや、俺が思っている以上にあかりを悩ませていたのかもしれない。

 俺自身は何も変わっていないと思っていた。でもあかりは違った。
 一人で出産を決めてしまうくらい、思い悩ませてしまっていた。そのことに気づいてあげられなかった。


「……ごめんね」


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