孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 無言のまま穂高壱弥がちらりとこちらを見る。すぐ正面に目を戻すと、走行音に紛らわせるように低い声を発した。

「すごいよな、そういうところ」

「え?」

「嬉しいとか、悔しいとか、そういう感情をおまえは臆することなく表に出す」

 心の声が漏れたような呟きに、首をかしげる。

「普通じゃないですか?」

「そうでもないだろ。普通は簡単に気持ちを表出させない。気遣いの場合もあるだろうが大抵は自己保身のためだ。相手の気持ちを害さない言葉を選ぶ体で自分を守ろうとする。日本人の大好きな本音と建前ってやつだな」

「私は気遣いができていないと……?」

 あまり深く考えたことがないけれど、知らずに相手に嫌な思いをさせているのだろうか、と思っていると、

「いや、だからおまえの場合は本音を出してるのに人を不快にさせないところがすごい。俺も建前は言わない質だが、結果、人間関係は惨憺たるものだ」

 それは無表情が原因では? と内心で思いつつ改めて自分の言動を振り返ってみるけれど、壱弥さんの言わんとしていることが理解できなかった。

「すみません、よくわからないです」

 バカでごめんなさい、と謝る私に、彼が吐息を漏らす。

 呆れられちゃったかな。

 そっと横顔をうかがうと、口もとに小さな笑みが浮かんでいてドキリとした。

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