孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
口ごもりながらも素直に答えた。
だって、出会ったその日に婚姻届への記入を求められたのだ。たまたま私が条件に一致したというだけでそんなことを言い出すのだから、これまでにも同じようなことはあったのかもしれない。
「あのな」
はあっとため息が聞こえた。見ると彼は嘆かわしそうに長い指で額を押さえている。普段めったに変わらない表情が歪んでいるらしい。次の瞬間、ぎろりと横目で睨まれて首をすくめた。
「さすがの俺も、好みじゃない女と結婚しようとは思わない」
怒ったように前を向く彼を凝視してしまった。
放たれたセリフは一瞬で秋の空に流れてしまったのに、余韻が胸に刺さってじわじわと熱を広げていく。
……本当に? 少しは私に好意をもってくれてるの?
感情を臆することなく表に出す、と褒められたばかりなのに、今の気持ちはどうしても口に出すことができなかった。
嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったいような。
形容しがたい想いが胸いっぱいに広がっていく。
ふと車が停車して顔を上げた。沿道のイチョウ並木が美しく色づいた通り。その下の駐車スペースでエンジンを停止させると、壱弥さんはポケットから濃紺色の小さな箱を取り出して私に差し出した。
「開けてみろ」