孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ブランドのイニシャルらしいアルファベットが刻印された濃紺の蓋を開くと、中には同じ色のドーム型のケースが入っていた。両開きになっているそれを開いた瞬間、細やかな光の粒が目に飛び込んできた。

 両側に開いた蓋はベルベット調になっていてブランドの名前が印字されている。宝飾品に疎い私でも聞いたことのある、海外セレブがよく身に着けている有名ブランドだ。そして真ん中に収まっている指輪はラウンド型の輝かしい宝石を抱いている。

「これって、婚約指輪……?」

「本当は食事でもしながら渡すつもりだったんだが……」

 ほんの少し角度をつけただけできらきらと繊細に輝くダイヤモンドに見とれてしまう。これまで宝石を見る機会なんてなかったし、そもそも誰かに指輪をもらったこともない。いつか結婚するとしても、婚約指輪なんて私には縁がないかもしれないと思っていた。

「ありがとう、ございます」

 声が震える。

 形容しがたい感情がまた胸に込み上げて、なぜか涙が出そうだった。

 婚約指輪は指に嵌めるリング側がメインだと思っていたけれど、もしかすると宝石を美しく輝かせるための台座にすぎないのかもしれない。そう思うくらいダイヤモンドは美しく、吸い込まれそうだ。

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