孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない


***


 東京都心から電車で一時間半。区内を縦断する川に沿って広がるこの街は豊かな自然と緑の魅力に恵まれた東京隣県のベッドタウンだ。駅徒歩十五分の道のりを歩きながら、落葉が進み始めた並木道を見上げた。手に提げた紙袋の重みに息をつく。

 食べ盛りの弟妹たちへのお土産はほとんどが食品だ。いつものようにタッパーに詰め込んできた煮物やきんぴらに加えてサプライズで用意したのは食べたがっていたデパートのパンと流行りのお菓子。久しぶりの帰省に荷物が増えすぎたことを少し後悔しながら残りの道のりを歩く。

 十一月に入り、壱弥さんは一週間の出張に出かけた。買収を進めている飲食チェーンの各店舗を視察するため、冴島営業統括部長と全国を飛び回っている。その間、カバン持ちも休業になったため暇を持て余していたところ、実家から連絡が入り、重い腰を上げて帰省することに決めたのだ。

「さすがに結婚のことを伝えないといけないしな」

【元気にしてる? 彼氏くんとは順調?】

 帰省のきっかけになった母親からのメッセージを思い出してため息が落ちる。

 さて、どう説明したものか……。

 リサさんたちに挨拶したときとは訳が違う。実の娘が相談もなくいきなり結婚したと知ったら、母親はどんな顔をするだろう。下手したら勘当ものだ。

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