孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 皿をそのまま並べようとする弟を制止して台布巾を滑らせる。狭いダイニングを占領する六人掛けのテーブルには、あちこちに傷やシールを貼った痕があった。その一つひとつに思い出が刻まれていて、幼い子どもを何人も育んできた勲章みたい。

「で、最近どうなの? 仕事は順調?」

 ようやく食事を始めながら、母親が声を掛けてくる。私はお茶を飲みながら苦笑いを浮かべた。

「えーとそれが、なんというか……いろいろあって」

 母親には心配をかけまいと何一つ説明していなかったから、まずは会社をクビになったところから話さないといけない。それから純也と別れて別の人と結婚したこと。

 考えながら首を振った。ダメだ、どう考えても結婚が唐突すぎる。

「うまく説明できないんだけど、とりあえず万事OKというか」

「どういうこと? あ、こら海! 鶏肉ばっか取らない! 陸、食事のときは本をしまいなさい!」

 食卓に忙しく目を配りながら「で?」と話を促され、曖昧に微笑んだ。

「うん、あとでゆっくり話す」

 どう考えても小さい弟妹がいる中で落ち着いて話せる内容じゃない。

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