孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 父親がいないぶん家計の足しにすべく私は外で必死に働き、仕事と家事育児で忙殺されていた母親を間近で見ていた当時十一歳の太陽が、自然と小さい弟妹たちの面倒をみるようになった。

 思春期真っ盛りだった中学時代も、友達と遊ぶ時間を削って妹たちを遊びに連れて行ってくれたり、進んで家事をしてくれたり。自分を犠牲にして家族に尽くしてくれた弟の夢が、将来薬剤師になることだと知ったからには、絶対に大学に行かせてあげたい。

「……ちょっと、俺を見ながら涙ぐむの、やめてってば」

「いい弟もったなと思って」

 諦めたようにため息をつく弟に頬ずりをしたい衝動をこらえていると、山盛りのごはんをあっという間に空にした音がお箸をくわえながら言う。

「おねえ、いつまでいる? 一緒に動画見よ」

「日曜まではいるつもりだけど、勉強はいいの?」

「うん、息抜き」

 妹の音は帰省するたびに私に自分の好きなアイドルグループの動画コンテンツを見せるのが習慣になっている。ほかの兄妹が一切興味をもってくれないらしく、共有相手が欲しいらしい。

「というか、このお菓子ってこのあいだテレビでやってたやつ? やった」

「あー! オト姉ずるい!」

 菓子の箱を開けた音に、風呂上がりの海が突進していく。

「あたしが先に開けたかったのに!」

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