孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ここへ来て、至極まっとうなことをおっしゃる。

 洗面台の鏡に映る自分の顔が、泣き笑いの絵文字そっくりになっていた。出会った日の傍若無人ぶりが嘘みたいに壱弥さんは正論を吐く。

「むしろ遅すぎるくらいだ」

「ええと、そうなんですけど、まだこっちの準備が整っていないというか」

「ヒイ姉、電話だれ? 彼氏?」

 背後から突然声がして、飛び上がる。

「う、海。違うから、ちょっと向こう行ってて」

 追い払おうとしても、小さい妹は私に絡みついて離れようとしない。

「彼氏でしょー、彼氏さーん、聞こえますかー」

 わざと大きな声で言うイタズラ盛りの妹を、慌てて引きはがす。

「ちょ、海!」

「妹の海でーす。ヒィ姉とラブラブですかー?」

「すみません、下の妹が!」

 通話口に手を当てて慌てて弁明すると、低い声で「代われ」と言われた。

「え……」

「いいから」

 有無を言わさぬ強い口調に、妹を見下ろす。きょとんと私を見上げる海に、おそるおそるスマホを渡した。不思議そうに受け取ると、怖いもの知らずの妹はためらうことなくスマホを耳に当てた。

「もしもし? はい、うん」

 なにか短く会話をしてから、海は「はい」と私にスマホを返した。満面の笑みを浮かべて嬉しそうに言う。
< 133 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop