孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「ラブラブだって」

「えっ」

 踊るようにリビングに駆けていく妹の背中を見ながら、再びスマホを耳に当てた。

「妹にいったいなにを?」

「別に大したことじゃない。とにかく今日そっちに行く。時間は分かり次第連絡する。じゃあな」

 そう言うと、通話が切れてしまった。ツーツーという不通音を聞きながら立ち尽くす。

 壱弥さんがここに来る? 古い団地の狭いわが家に? あのキラキラのオーラをまとった美しい人が?

 想像しただけで場違い感がすさまじい。改めてとんでもない人と結婚したのだなと思っていると、母親がひょこっと洗面所に顔を出した。

「彼氏くんから電話だって? なんか海が騒いでるけど」

「ええと……」

 海がなんと言って騒いでいるのか想像つかないけれど、母親は怪訝そうに眉をひそめている。頬が引きつるのを感じながら一言だけ口にした。

「……ご説明いたします」





「というわけで、私、結婚しました」

 紅茶が入ったマグカップに向かって呟くように最後まで言い切ってから怖々と顔を上げた。

 テーブルの反対側に座っている母親は目を丸めたまま固まっている。

 塾の自習室にでかけた音と部活に行った太陽は不在で、双子が夢中になっているテレビゲームの音だけがリビングダイニングに響いている。

「あの……」

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