孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 椅子を引く音に顔を上げる。話は終わったというように立ち上がった母親が私の視線に気づいてにこりと笑った。

「お相手が今日来るんでしょ? 話はそれからにしましょ」

 笑顔が凄みを帯びていて、頬が引きつった。







 そうしてやってきた壱弥さんは思っていた通り、狭い我が家で激しく浮いた。古びた家にオーラをまとった彼はまったく馴染まず文字通りAR(仮想現実)みたいに浮いて見えた。

 壱弥さんのいるところだけ時空が歪んでる……。

 六人掛けのダイニングテーブルで姿勢を正してお茶をすする姿を見ながら内心でつぶやく。

 時刻は午後六時。窓の外はすっかり暗くなっていた。

「ていうか海、なんで壱弥さんの隣に座ってるのよ」

 さっきから彼の隣を陣取ってぴたりとくっ付いている下の妹が、腕に絡みつく勢いでつぶやく。

「おにいさま」

「違う! いや違わないけど! いいから離れなさい」

「いやだ!」

「海!」

 暴れる妹をどうにか引きはがし、私は勢いよく振り返る。

「で、音はそんなところでなにしてるわけ!?」

 壱弥さんが来た途端に隣の部屋へと駆け込んだ上の妹は、引き戸を薄く開けて隙間からじっとこちらを凝視している。

「こっちに触れないで。遠くで拝みたい」

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