孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「拝みたいって、大仏じゃないんだから。というかお母さんまでなにしてるの!」

 よく見ると音の陰に母の姿があった。娘と同じように隙間から壱弥さんを隠れ見ている。

「話をするんでしょう。こっちに来て座って!」

 私の言葉にはっとしたように瞬きをし、「目がつぶれるかと思ったわ」と言いながら姿を現した。

「というか私ったらすっぴんで。お化粧してくるから」

「いいからそのままで!」

「でもお客様に失礼じゃ」 

「大丈夫、そのままでも十分綺麗だから」

 宥めながらどうにか壱弥さんの前に座らせると、母は観念したように息をついた。無表情の壱弥さんを見上げ、彼女はようやくいつもの笑顔を見せる。

「ごめんなさいね、騒がしくて」

 リビングのソファから興味津々な視線をよこしてくる双子と、相変わらずドアの陰で覗き見をしてる中学生の妹、そしてキッチンには仁王立ちをして威圧的にこちらを見ている高校生の弟。

 文字通り四方八方から注がれる視線をしっかり受け止めながら壱弥さんは静かに言う。

「いえ、こちらこそ急にお邪魔して申し訳ありません」

 脇に置いていた紙袋から菓子折りを取り出し「つまらないものですが」と礼儀正しく手渡すと、すぐに本題に入った。

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