孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「改めまして、穂高壱弥と申します。ホダカ・ホールディングスという会社の代表を務めております。ひかりさんからお聞き及びかと思いますが、先日お嬢さんと入籍しました」

 一瞬空気が固まった気がした。兄妹たちにも簡単に事情は説明したけれど、改めて彼の口から紡がれた言葉は私が口にした言葉とは重みが違うようだった。

「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません」

 深く頭を下げる彼の隣に座って私も一緒に頭を下げる。さっきまでの騒がしさが鳴りを潜めあたりを静寂がつつむ。すると、母が静かに言った。

「そうね、本当に急で驚きました」

 ほんのり冷えた声に顔を上げると、母は心なし厳しい表情を浮かべて壱弥さんを見ている。普段からハキハキとした物言いで子供たちを叱ることが多い彼女だけれど、それとは異なる静かな目線だった。

 壱弥さんを、見定めようとしている。

「挨拶のことはもういいです。こうして来てくださったし。立派な会社の社長さんみたいだし、お忙しいのでしょう」

 母のいつもとは違う雰囲気に心臓が騒いだ。長らく母とは友達のような同士のようなつもりでした。幼い弟たちを一緒に育てる仲間みたいに思っていたけれど、彼女はちゃんと私の母親でもあるのだ。

「入籍が急だったこともこの際どうでもいいです。ただひとつだけ教えてください」

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