孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
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頬に当たる風がいっそう冷たくなった十二月半ば。いつものようにカバン持ちの仕事を終えて帰宅しようとすると、廊下で深水さんに呼び止められた。
「明日からしばらく仕事は休んでください」
「え、なぜですか」
社長秘書はいつものように笑みを浮かべる。
「社長からのご命令です。最近忙しかったですしいい機会なのでゆっくりされては? 外は寒いのでなるべくご自宅で過ごされるのがよいかと思います」
おすすめだというお取り寄せのカタログを私に渡すと、深水さんは「おつかれさまでした」と微笑んで社長室に戻っていく。
蟹やイクラ、ホタテなどの海鮮や国産A5ランクの和牛、さらにはお正月に向けてお節のお取り寄せ商品が載ったカタログに目を落とし、社長室に消える背中に目を戻す。
まるで家に居ろと言われたみたいで釈然としないけれど、社長命令なら従わなければならない。
まあ、今夜本人に聞いてみればいいか。
最近の壱弥さんは遅くとも午後十時頃までには帰宅する。ベッドに入るのは午前0時だけれど、私が先に寝るまでの間はふたりでリビングで過ごすことが多かった。