孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ソファにもたれてテレビを見ている私の横で彼はタブレットで調べ物をしたり、私がストレッチをしているときに読書をしていたり。同じ空間にいても基本的には別々のことをしているけれど、どちらからともなく観始めた映画をいつの間にか一緒に観ていることもある。

 会話をしなくても傍にいるだけで落ち着く、私のお気に入りの時間だ。

 だから今日もその時間に話をしよう。そう思っていたのに、夜九時過ぎに帰宅した壱弥さんはひとりではなかった。

「秘書見習いの海野だ。しばらくうちに滞在してもらう」

 いつものように玄関前のサロンチェアにカバンを置いてジャケットを脱ぐ彼の隣に佇むのは、ショートカットの女性だった。ぴたりとしたパンツスーツ姿の彼女が、私を見て小さく会釈をする。

「海野です。しばらくお世話になります」

「滞在って、泊まるんですか」

「……ああ。秘書にはうちのことも把握してもらう必要がある」

 確かに深水さんは社長の自宅で我が物顔でお茶を淹れたり料理をしたりしていたけれど。

「ずいぶん急ですね」

「いろいろ事情があるんだ。ひかりは普段通りに過ごせばいい。海野、ついてこい」

 私の視線を避けるように壱弥さんは彼女を伴って二階に上がっていく。私が最初に泊まったゲストルームを使ってもらうらしい。

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