孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 なんだかすっきりしない。いくら仕事関係の人でも、妻に相談なく女性をすんなり自宅に上げるなんて。

 ふたりが消えていった階段を見つめて寂しさを覚える。

 彼の中で私は妻ではなく、ただの抱き枕に過ぎないのかな。

 シンクでコップを洗いながら足音も立てずに彼の後ろに続いていった秘書見習いを思い返す。

 年齢は二、三歳くらい上だろうか。ショートカットがよく似合う整った顔立ちで、笑みを絶やさない深水さんとは対照的にどこか冷たい雰囲気を放つ美人だった。

 話がしたくてしばらくリビングで待っていたけれど、ふたりはなかなか下りてこない。結局その日、私が起きているあいだに壱弥さんがベッドに入ってくることはなかった。







 翌朝、私が六時に起床すると彼女はすでに起きていた。というか、私が一階に下りたタイミングで玄関から外に出ようとしていた。昨日と同じくパンツスーツ姿の彼女は私に気がつくと「奥様、おはようございます」と小さく頭を下げる。

「おはようございます。こんな時間にお出かけですか?」

 奥様と呼ばれるとまだくすぐったい気持ちになるけれど、彼女に対してはなぜか「ひかりと呼んでください」とは言えない。

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