孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 すらりと背の高い彼女は私とほとんど目を合わさない。まるで最低限のコミュニケーションしか取らないと決めているみたいだ。

「ええ、少し散歩に」

 短く返答し表に出ていく。それからしばらく彼女は戻ってこなかった。

「なんだか、不自然ですね」

 朝食を食べながらつぶやくと、いつものように私の向かいの席でコーヒーを飲んでいた壱弥さんが目を上げる。

「海野か? まあ、気にするな」

 そう言われても。

 せっかくふたりの暮らしに慣れてきて、あわよくばもっと距離を詰めたいと考えていたところなのに。急に見ず知らずの女性に出入りされて戸惑わないはずがない。

 頭にチラついたのは、はじめてこの家に訪れた日のことだ。今と同じ席に座って、壱弥さんから『取引話』を聞いたとき。

 ――結婚したあとに、お互いに好きな人ができたら?

 そう問いかけた私に、彼は言った。

 ――そのときは離婚届に判を押せばいい。

 心臓がドクッと跳ねた。

 まさか……ね。

 分かりづらいとはいえ彼が海野さんに対して特別な感情を抱いているようには見えないし、彼女の方も最低限の接触しかしていない気がする。少なくとも私が見ている前では。

 考えているうちに不安になった。

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