孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ついさっきまでクリスマス気分で浮き立っていた胸が、ぎゅうっとねじれた。鈍い痛みに唇を噛む。

 彼女が自宅に出入りしているのに、私を実家に帰すの?

「……いや、です」

 小さく答えると、壱弥さんの表情がわずかに曇った。

「どうして? ちゃんと理由を説明してください」

 困らせると分かっていたけれど、聞き分け良く頷くことはできなかった。

 私を見下ろす端正な顔に感情は見えない。冷たくも温かくもない息をつき、彼は短く告げる。

「ダメだ。中途半端に話したら不安にさせる」

 いつもはなんとなく分かる壱弥さんの表情が、今は全然読み取れない。

 涙が滲みそうになって顔を伏せた。

 秘書見習いの彼女は我関せずというふうにこちらを向かないけれど、きっとすべてを把握している。それなのに、妻の私にはなにも話してくれないの?

「私がこの家にいたら、邪魔なんですか?」

 彼の眉根が寄って怪訝そうに見下ろされる。実家に帰れと言えば素直に従うと思っていたのかもしれない。当然だ。私たちは契約で結ばれた偽りの夫婦なのだから。

「私が、必要なくなったの?」

 自分で口にした瞬間、悲しみが溢れ出した。

「ひかり」

 肩を掴まれたけれど止まらなかった。子どもみたいにいやいやと首を振る。

「契約は終了ってこと?」

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