孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 運転手が慌ててハンドルを右に切る。けれど、反対車線の向こうから走ってきたセダンが横で停止して進路を塞がれてしまった。

「ちっ、読まれてた」

 つぶやくや否や、彼女はすばやくシートベルトを外した。私のベルトも瞬時に外し、手を伸ばす。

「ひかりさん、こちらに早く!」

「え」

 腕を引っ張られながら車外に出ようとした瞬間、前に停車したワゴン車からスーツ姿の大柄な男性がふたり出てきた。そちらに気を取られているあいだに、背後からいきなり声を掛けられびくりとする。

「穂高ひかりさんですね?」

 いつのまにか対向車線に停まっていた車からも人が降りてきていた。いずれも黒いスーツをまとった男性だ。

「一緒にきていただけますか」

 問答無用で手を掴みにくる威圧的な態度に胸の奥で警鐘が鳴る。すると私に手を伸ばした男性が苦しげに身をよじった。

「こっちです」

 男性の腕をひねり上げた海野さんが私に手招きをして路地に駆け込んでいく。咄嗟に後を追うと、背後で男性たちの慌てたような声が聞こえバタバタと足音がついてくる。

「ひかりさん、このまま突き当りまで走って右に曲がってください。中華料理屋があるのでそこに隠れて。仲間がきます」

「なにが起きてるの? あの人たちは」

「いいから全力で走って。我々は穂高社長のご命令であなたを警護しています」

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