孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「え、警護って――」

 海野さんは立ち止まると、追いかけてきた大柄な男に足をかけた。つんのめって転がった巨体が路地に置いてあったゴミ箱にぶつかり派手な音を立てる。海野さんはさらに突っ込んでくる別の男をひらりと躱し、前のめりになった男の勢いを利用して投げ飛ばした。

「はやく!」

 彼女の声にはっとし、止めかけていた足を動かす。

 よくわからないけれど、彼らの目的は私らしい。たぶん、私が掴まると壱弥さんに迷惑がかかるのだ。

 言われた通り全力で走る。けれど突き当りまであと少しというところで聞こえた背後からの声に、思わず振り返った。

「止まってください、奥さん。この女性がどうなってもいいんですか?」

 男がふたりがかりで海野さんを地面に押さえつけていた。その脇に立った小柄な男が声を張り上げる。

「なにか誤解されているようですが、私たちは御園の者です。あなたの義理のお兄様があなたに会いたがっています」

「御園……」

 パッと思い浮かんだのは政治家の顔だ。記者会見でたくさんのマイクに向かって話している連民党の代表だった御園健治――壱弥さんのお父さん。

 たしか長男が公設秘書をしていると深水さんが言っていた。壱弥さんの異母兄の御園徹。つまり私の義理の兄にあたる彼が、私に会いたがっている?

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