孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 通された広間にはアンティーク家具と革張りの大きなソファ、そして中庭を臨むガラス窓を真ん中で仕切るように暖炉が設置されている。

 オレンジ色の炎が灯る暖炉の正面に一人掛けソファがあり、座っていた四〇代くらいの男性が立ち上がった。

「ようこそ。御園徹です。弟の奥さんに会えるなんて嬉しいよ」

 にこやかに笑うその人は、長身の壱弥さんより随分小柄で、凹凸のはっきりした彼とは対照的にのっぺりした顔立ちをしている。本当に異母兄なのだろうかと不思議に思うほど、目の前の男性には壱弥さんとの共通点がなかった。

「……穂高ひかりです」

 握手を求められて応じるとソファを勧められ、浅く腰掛ける。

「それにしても驚きました。あの壱弥が結婚したなんてね」

 徹さんが話し始めると、エプロン姿の女性が現れてテーブルに紅茶と焼き菓子を置いていった。

 車で追跡されたり、路地で追いかけられたり、そういった出来事が全部なかったみたいなごく普通の接し方に、かえって戸惑う。

「あの、私になんの御用でしょうか」

 とにかく用件を済ませて早く立ち去った方がいい。私がここにいることはきっと壱弥さんの利益にならない。

 そう思って口火を切ったのに、徹さんは無反応だった。

「あいつはちっともここに顔を出さなくてね。昔散々可愛がってやったのに」

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