孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「俺だっておまえと話なんかしたくないよ。けど親父の言葉は絶対だ。知ってるだろ」

 苦々しい顔の異母兄を見る壱弥さんの目は冷たい。そんな視線にかまわず徹さんは溜まっていたらしい不満をぶちまける。

「だいたい親父も親父だよ。実業家として成功したからって一度追い出した男を今さら後継者にするだなんて。どの面下げて言ってんだ」

「そんな話だろうと思った」

 壱弥さんが口角を上げた。一瞬浮かんだ皮肉っぽい笑みはすぐに消えてもとの無表情に戻る。

「あの男に伝えておけ。俺はこの家とは関係ない。後継者になるつもりもないし、政治の道に進む気もない。もちろん相続も放棄する」

 異母弟のはっきりした言葉を疑わしそうに聞いてから、徹さんはため息をつく。

「こちらとしては有り難いが、あの堅物がそれで納得するとでも? 自分で言ってくれよ。もしくは誓約書でも書くか」

「わかった。誓約書でも念書でもなんでもサインしてやる」

 虚を衝かれたようにぽかんと口を開ける徹さんに「ただし」と付け加える。

「今後一切、俺に関わるな。もちろん彼女にも」

「はは、願ったり叶ったりだ」

 また少年のように笑ってから、徹さんは私をここまで案内した小柄な男に命じて書類を用意させた。壱弥さんが書類に目を通し、サインをする。

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