孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 リビングに運んでセンターテーブルに並んだ料理を眺める。丸皿にリースに見立てて盛ったサラダとイカと玉ねぎのマリネ、サバとクリームチーズのパテに卵入りのミートローフ。

「ちょっと作りすぎたかな……」

 クリスマスの準備をするのは実家にいたとき以来だ。弟たちが嬉しそうに食べてくれる様子を想像しながら料理をする――私にとって至福の時間だった。

 目の前に並んだ料理を見下ろしながら苦笑する。

 久しぶりのクリスマスパーティーを楽しみにしているのは私の方かもしれない。

 デザートの準備やらリビングのセッティングやらをしているとあっというまに午後九時になった。

 玄関の方から音が聞こえて急いでエプロンを脱ぐ。今日は一番気に入っているワンピースを着て丁寧に髪を巻いて普段より着飾ってみた。

「おかえりなさい」

 手早く身支度を整えて出迎えると、壱弥さんは一瞬まばたきをした。

「……ただいま」

 いつものように玄関脇のサロンチェアにカバンを置いてコートを脱ぐ彼の背中を見ながらふと思う。

 そういえば『おかえり』と言って私が玄関まで出迎えるのも、彼が『ただいま』と応じるのもはじめてかもしれない。

 夫婦ならあたりまえの言動なのになんだかくすぐったい。

< 185 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop