孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 はっきりした声に目を戻すと、穂高社長が私に向けていた視線をタブレットに移した。

「適度な空腹は脳のパフォーマンスを上げるが、過度な空腹状態は思考を鈍らせる。きちんと食事をしたうえで、最適な解を導き出せばいい」

 つまり、今夜どう過ごすのか、夕ご飯を食べたうえで答えを出せということらしい。

 私の立場に立ったセリフだからだろうか。これまでと変わらない淡々とした物言いなのに、突き放された感じがしない。

「ありがとうございます。というか、深水さんが社長さんのお食事まで用意されてるんですね」

「たまたまだ」

「料理でしたら私より社長の方がはるかにお上手ですよ」

 ローストビーフが盛り付けられた大皿を運びながら深水さんが微笑む。そのほかの料理も次々とテーブルに並べ、彼は手伝いを申し出る隙も与えずてきぱきと食卓を整えた。ガラス瓶に入った水をグラスに注ぎ、フランス料理店のシェフよろしくお辞儀をする。

「それではどうぞ、ごゆっくり」

 ローストビーフにグラタン、いろどりがきれいなアボカドとトマトのサラダにエビのビスク。ちょっとしたパーティのような献立が目の前を埋め尽くしていて思わず生唾を飲み込んだ。

 正面に座った社長は、意外にもきちんと両手を合わせてから食事を始める。

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