孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 言い直された言葉にドキリとした。それと同時に身の丈に合わない呼び名に少しおかしくなる。

「おかげさまで」

 苦笑しながら答えると、社長秘書というよりも執事といった雰囲気がぴったりの深水さんが微笑みながら口にした。

「今日はまたどうしてこちらに」

「仕事をやってもらうことにした」

 飛んできた穂高壱弥のセリフに私と深水さんは顔を見合わせる。

「仕事とは……」

「俺のカバン持ちだ」

 そう言うと、バッグを私に向かって放り投げた。レザーのブリーフケースを慌てて抱きとめる。

「深水、今日のスケジュールに打ち合わせを一件追加したい」

「はい、十三時からの三十分ならどうにか。ただ十四時までに移動する必要があります」

「リモートでかまわない。車内でつなぐ」

 急に仕事の話が始まってぽかんとしている私に、穂高社長の鋭い視線が向けられる。

「深水。簡単に社内を案内してやれ。それから朝礼でひかりのことを周知。ただし社内ではただのカバン持ちということにしておけ」

 とっさに言われた言葉に耳を疑った。

 今、さりげなく名前を呼ばれたような……。

「かしこまりました。ではひかりさん、こちらへ」

 穂高壱弥のセリフを引き取るように、深水さんはにっこり笑って私を社長室の外に連れ出す。

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