孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「小学生の感想文か」

 運転席の後ろから放たれた言葉にかちんとくる。素直に口にした感想をバカにされた。

「深水さん、穂高社長って目が悪いですか? 私のことを美人と言ったのでなにかの間違いじゃないかと」

 仕返しのつもりで言うと、深水さんは一瞬きょとんとした顔をしてから表情を崩した。

「社長の視力は野生児並みの2.0です。ひかりさんはとてもお綺麗ですよ」

 思いもよらなかった返答に固まる。

 秘書の隣で社長は肯定するでも否定するでもなく無表情のままタブレット画面に目を落としている。

「ええと」

 にこにこしている深水さんから目を逸らし正面に向き直った。静かに走り出した車の中で、人知れず眉をひそめる。

 おかしい、この人たち。それとも私の方がおかしいの?

 実家を出るまでは家の手伝いや弟たちの世話で忙しかったからクラスメイト以外の男子と話したことはなかったし、これまでにできた彼氏は純也だけだ。

 その純也から、付き合ってしばらくしてからはずっと『可愛くない』と言われ続けてきた。だから男性から見たら私みたいなぼんやりした顔立ちは好みじゃないのだろうなと思っていた。

 もしかすると、社長やその秘書といった上流にいる人たちは美人を見慣れすぎて感覚がおかしくなっているのかな。

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