孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「民事再生もしくは売却して撤退、というところですね。でも買うんでしょう?」

 微笑む神谷弁護士に穂高社長が口角を持ち上げた。

「全国五十店舗の飲食店。売り上げは二十億です。ただし負債も十五億」

「さすが穂高社長。チャレンジャーでいらっしゃる」

「これ以上の負担はさすがに厳しいのでね。法務ⅮⅮで丸裸にしてください」

「努力しましょう」

「それとCSRの件ですが――」

 わからない単語が飛び交う中、せめてもとメモを必死に取った。時間にして三十分ほどだろうか。話を終え、穂高社長がソファを立つ。

「お忙しい中、ご足労いただきありがとうございました」

 笑顔の所長弁護士と真面目な表情を崩さない鋼鉄の秘書に見送られ、社長とともにエレベータに乗り込む。エントランスから外に出ると、どこかで待機していたらしい社用車がタイミングよく社長の前で停車した。

「おつかれさまです」

 社長が開いたドアの奥で深水さんの笑顔が咲く。さきほどの甘いマスクの弁護士先生に比べるとどことなく胡散臭い微笑みなのに、不思議と気持ちがほぐれる。

「ひかりさん、神谷所長はいかがでしたか?」

 助手席に乗り込むと、後部座席の深水さんが興味深そうにのぞき込んできた。

「はい、テレビに出てる人に会うのは初めてだったので、びっくりしました」

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