孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「あった。法務DDですね」

「はい。当社はDDとPMIを同時に行えることが強みです。このおかげで買収完了から業績向上に至る過程がスムーズになる」

 難しいことはよくわからないけれど、今穂高社長と話している男性がめちゃくちゃ重要なポジションのエリート社員だということは分かった。

 通路に立ったまま話し込んでいる彼らを隅っこからそっとうかがう。社長とは違うタイプの美形な営業統括部長は、厳しい顔のまま書類を指さしている。

「SY社の再生には支払予定の取引先をいくつか回る必要があるので、こちらのリストの会社に猶予をもらいに行きます」

「わかった。資金繰りは俺とCFOでなんとかする。全国視察の件はどうなった」

「はい、来月一週間かけて私が直接行きます」

「俺も同行する」

「CEOが自らですか?」

「冴島だけじゃ心もとないからな」

「ありがとうございます」

 ずっと表情を引き締めたままだった冴島営業統括部長が薄く笑って一礼した。

 踵を返す部長の背中を見送ってから、すでに別の社員と話し始めている社長に目を戻す。

 傍から見たら、冴島部長が社長から頼りない、と言われたような会話だったのに、当の部長は『ありがとうございます』と笑って去っていった。

< 90 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop